髪は弱酸性の状態がいいと言われます。
髪が弱酸性になっていると、髪の電荷がゼロの安定した状態になっています。
この状態が等電点で、pHが4.5~5.5の状態です。
今回は、等電点とは何か?
なぜ弱酸性が髪にいいのか?についてお話したいと思います。
等電点とは?
等電点とは、アミノ酸などのカルボキシル基(COOH)とアミノ基(NH2)の両方を持っている化合物の電荷が見かけ上ゼロになるpHのことです。
髪の主成分はタンパク質で、タンパク質はアミノ酸からできています。
さらに、髪のタンパク質は18種類のアミノ酸からできています。
18種類のアミノ酸がそれぞれ異なった比率のプラスとマイナスの比を持っていて、平均した電荷がゼロになる状態が髪の等電点になります。
pHとは?
理科の時間に習ったpH。
りょうたろうは「ペーハー」と読むと教えられましたが、最近は「ピーエッチ」と読むらしいです!
ちなみにペーハーはドイツ語読みですね。
pHは、どれだけ酸性か、どれだけアルカリ性かを表すためのもので、0~14までの数字で表します。
pH=0に近いほど酸性が強く、7が中性、そこから14に近づくとアルカリ性が強くなります。
理科の実験ではリトマス試験紙で酸性かアルカリ性か図りましたね。
酸性だと青のリトマス紙が赤に、アルカリ性だと赤のリトマス紙が青に、中性だと変化なしでした。
こちらは消費者庁の合成洗剤の定義です。
pH | 液性 |
---|---|
0~3 | 酸性 |
3~6 | 弱酸性 |
6~8 | 中性 |
8~11 | 弱アルカリ性 |
11~14 | アルカリ性 |
弱酸性はpHが3~6となっていますが、髪の等電点は4.5~5.5と一般的に言われています。
ですが、髪のダメージによっても等電点のpHは変わります。
髪の等電点を詳しく説明
髪の等電点には、髪の結合が関係してきます。
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まずは結合の簡単なイメージ図
横の結合には3種類あり、その一つがイオン結合です。
イメージを持ってもらったところで、もう少し難しい図にします。
複雑で分かりにくいので、上の絵のイオン結合の部分だけ取り出してみましょう。
このように、イオン結合は、NH3+とCOO-のプラスとマイナスがくっついてできる結合です。
プラスとマイナスが同数ずつあればしっかりくっつきます。
弱酸性の状態において、この安定した状態=等電点になります。
酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸
アミノ酸はカルボキシル基(COO-)とアミノ基(NH3+)を持ちますが、カルボキシル基が多いアミノ酸を酸性アミノ酸、アミノ基が多いアミノ酸を塩基性アミノ酸と呼びます。
そして、カルボキシル基とアミノ基の数が同じものを双性アミノ酸と呼びます。
18種のアミノ酸は酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、双性アミノ酸が混ざっているのですが、中性の溶液中では酸性アミノ酸が多いため髪は濡れるとマイナスの電荷を持つことになるのです。
平衡状態
中性の溶液中では酸性アミノ酸が多い状態が平衡状態となっています。
等電点にするには、アミノ酸の電荷の総和がゼロになる状態で平衡させなければなりません。
酸性にすることでH+の濃度が上昇するため、それを打ち消すように酸性アミノ酸が双性アミノ酸側に移動します(ルシャトリエの原理)
pH=5付近でちょうど総電荷がゼロになるため、弱酸性で等電点となるワケです。
弱酸性が髪にいい理由
髪は、アルカリ性になると結合が切れて柔らかくなります。
さらに、キューティクルが開きます。
結合が切れた状態だと髪が柔らかく、切れ毛や枝毛の原因になったりします。
また、キューティクルが開いたままだと、髪がひっかかりやすくなったり内側の水分やタンパク質が流出してしまい、ダメージの原因になります。
なので、少し酸性に傾いた弱酸性の状態がキューティクルが閉じて髪の結合も安定した良い状態なのです。
ちなみに、パーマやカラーをするときにはアルカリ剤という薬品を使ってキューティクルを開きます。
そうしないと髪の内側に色素やパーマ液が浸透しないからです。
石鹸シャンプーはアルカリ性だから良くない
通常、石鹸水はアルカリ性(pH=9~10)です。
ですから、イオン結合が切れたり、キューティクルが開いたままになってしまい、髪に良くないのです。
石鹸シャンプーをした後は、クエン酸やお酢でリンスするのは、アルカリ性になってしまった髪を弱酸性に戻すために必要というわけです。
お酢のpHは3くらいなので、酸性側に戻せるワケですね。
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炭酸シャンプーがいいと言われるのも、髪の等電点に近いpH=5くらいだからです。