髪の疎水化は、髪のダメージととても関係が深い概念です。
髪は疎水状態であることが望ましいため、美容室では「疎水化トリートメント」というメニューがあるところも。
今回は、疎水化とは何?という話と、疎水化トリートメントの原理についてお話していきたいと思います。
疎水化とは?
疎水というのは水をはじく状態のこと。
子供の髪に霧吹きで水をかけると水をはじきますよね?
そう、傷んでいない髪は水をはじくんです!
逆に水を吸ってしまう髪は親水性のある髪と言われます。
親水化とは?
傷んだ髪というのは、下の絵のように内側のタンパク質が流出してしまって穴が空いてしまった状態です。
この穴はダメージホールと言います。
髪が水に濡れると、このダメージホールが水を吸ってしまうのです。
ダメージホールに吸われた水は「吸着水」と呼ばれます。
水に濡れた時、キューティクルが開くので、その隙間から水が内側に入り込むのですが、傷んだ髪はキューティクルが剥がれているので余計に水を吸いやすい状態になっているんです。
パーマやカラー等で傷んだ髪は、さらに水を吸いやすくなります。
髪の結合が切れてしまっているので、キュっと引き締まっていた髪がゆるんでしまい、より水を吸って膨らみやすくなります。
これを髪が膨潤すると言います。
髪の結合や膨潤については、こちらの記事で詳細説明しています。
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疎水化と髪のダメージの関係
疎水性のない髪(=親水性の髪)はドライヤーで髪が乾きにくい状態になっています。
そうすると、長い時間ドライヤーをかけなければならないので、髪の内側から乾燥してパサパサになってしまいます。
また、時間が長い分熱ダメージも大きいので、余計傷みやすくなってしまいます。
傷むとさらに親水化が進むので、ダメージの負のループにはまってしまいます。
他にも、親水化した髪はこんな良くないことがあります。
- ハリコシがない
- カラーが抜けやすい
- パーマが取れやすい
- 湿気でうねりやすい
そこで、親水化してしまった髪を疎水化する「疎水化トリートメント」というものがあります。
疎水化トリートメントとは?
細かく言うと色々ありそうですが、大きく分けると次の3つに分類できそう。
もちろん、これらを組み合わせたものもあるかもしれませんね。
- コーティング系
- ダメージホールの補修
- CMCの補修
一つずつ説明していきましょう。
1.コーティング系
被膜系トリートメントとも言って、髪の表面をコーティングするトリートメントです。
人によっては、疎水化トリートメントとは別扱いする場合もあります。
シリコンとか、他のポリマーで髪を覆って、アイロンの熱でがっつり吸着させるトリートメントです。
強力なやつだと、髪の表面が不自然にツヤツヤに光るやつです。
髪が傷んでいても、外側からコーティングするので、水の出入りがしにくくなります。
髪自体が疎水化されているわけではなく、ワックスかけたみたいに水を弾く感じです。
指通りもいいので、髪がよみがえったような感じになりますが、コーティングが剥がれると元通りの傷んで親水化した髪になります。
2.ダメージホールの補修
ダメージホールができると、そこに水分が入ったり、抜けたりします。
そこで、ダメージホールに失われたタンパク質の代わりとなる成分、PPTを補います。
これによりダメージ補修して疎水化できるというわけです。
ですが、PPTは所詮は偽物です(髪のたんぱく質とは異なる)
なので、1,2回シャンプーすると流れ出てしまいます。
ですが、美容室でのトリートメントが持ちがいい理由は、特別なものを使っているからです。
まず、ダメージホールから抜けにくいように、高分子のPPTを使っています。
高分子というのは、簡単に言うと、PPTの粒が大きいということです。
さらに、アルキル化PPTとかシリル化PPTも加えます。
アルキル化は、PPTに油分をくっつけること。
油が水を弾くので、疎水化できます。
シリル化はPPTにシリコンをくっつけるイメージ。
シリコンでコーティングして疎水化できます。
こうやって、ダメージホールを隙間なく埋め、疎水化もできるので長持ちするというわけです。
3.CMCの補修
CMCとは、キューティクルを髪にくっつけておいたり、髪の水分の出入りをコントロールする成分です。
ですから、髪の疎水化にはとても重要な成分なんです。
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CMCは、元々髪に存在する成分ですが、カラーやパーマなんかすると一気に失われてしまします。
そこで、CMCと同じような働きをする疑似CMCという成分を補うことで疎水化するというトリートメントもあります。
剥がれかけたキューティクルを補修できるので、水分の出入りをしにくくすることができるんですね。
髪の等電点を考える
髪の状態を「等電点」になるようにします。
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傷んだ髪はアルカリ性に傾いています。
これが髪が膨潤する原因になっているので、弱酸性(=等電点)の状態に戻します。
弱酸性のシャンプーを使うと効果がありますが、傷んだ髪の等電点はもっと酸性側になると言われています。
美容室によっては等電点を考えた疎水化トリートメントをしてくれるかもしれませんので、相談してみるのがいいでしょう。
セルフケアの方法
自分でケアする場合も、疎水化の考え方は美容室のトリートメントと同じです。
PPT、CMCなどの補修成分を配合したシャントリを使うこと、キューティクルの外側をコーティングすることで疎水化できます。
ドラッグストアで売られているシャンプーで効果があるものはほとんどないので、市販されているサロン系シャンプーを選びましょう。
実際に使った中では次の3つが効果が高かったです。
ロンド銀座リペアシャンプー
ディープレイヤーG
COCUUコンフォートシャンプー
キューティクルの外側をコーティングすることも疎水化効果があります。
代表的なのはシリコン。
他にも、
- ヒドロキシプロピルメチルセルロース
- ポリクオタニウム-10
- キトサン
などが使われます。
市販のコンディショナー、トリートメントにはほとんどシリコンが配合されているので、それを使えば問題ないでしょう。
まとめ
髪が「親水化」しています。
健康な髪は疎水性があり、水となじみにくく、ドライヤーをかけても乾きやすい状態です。
そんな状態に近づけるのが「疎水化トリートメント」
ですが、髪が元に戻るわけではないので、何回かシャンプーすると傷んだ状態に戻ってしまいます。
自分で疎水化させることもできますが、1,2回シャンプーしたら元通り。
自分でケアするのが面倒なら、美容師さんに相談してみましょう。
美容室では特別な方法で、長持ちするトリートメントをしてもらうことができますよ。